○粕屋町分限処分の指針
(平成18年11月27日指針第1号)
改正
平成22年5月31日指針第1号
令和2年3月23日指針第1号
第1 趣旨
第2 概要
第3 対象職員(地方公務員法第22条に規定する条件付採用期間中の職員及び同法第22条の3第4項に規定する臨時的に任用した職員を除く。)
第4 対応措置
第5 手続き
 (留意点)
  資料収集
   勤務実績不良又は適格性欠如に該当するか否かの判断は、単一の事実や行動のみをもって判断するのではなく、一連の行動等を相互に有機的に関連付けて行うものであるので、客観的な資料を収集した上で行う必要があり、特に、仕事上の失敗・トラブル・第三者からの苦情等の具体的な事実が発生した場合には、その都度、詳細に記録を作成しておく。また、注意・指導、警告書の交付等の措置を行った場合は、その内容を記録しておく。
  問題行動が心の不健康に起因すると思われる場合
   問題行動が心の不健康に起因すると思われる場合には、管理監督者は、職員に積極的に話しかけて事情を聞くほか、必要に応じ同僚等に職員の状況の変化の有無を聞き、また、健康管理者、健康管理医、専門家等と対応を相談する。
  懲戒処分との関係
   問題行動が懲戒処分の対象となる場合には、町長は、総合的な判断に基づいて懲戒処分を行うなど厳正に対応する必要がある。
  降任と免職
   分限処分を行う場合、良好な職務遂行が期待できると判断するときには降任処分とし、それが期待できないと判断するときには免職処分とする。
  行為の態様等に応じた手続の省略
   問題行動の態様や業務への影響等によっては、町長の判断と責任に基づいて、裁量の範囲内で、警告書の交付などの手続を省略することができる。
 (留意点)
  医師による適切な診断を求める努力
   心身の故障の回復の可能性の判断は、医師の専門的診断に基づく必要があるが、職場の実態や職員の職場における実情等について、診断する医師の十分な理解を得ることなどを通じて、適切な診断を求めていくことが必要である。
  病気休職期間満了前からの準備
   3年間の病気休職の期間が満了する場合には、その期間満了前から、当該職員や主治医と緊密に連絡を取って病状の把握に努め、医師2名の診断を求める必要があるかどうか検討しておく。
  複数の異なる内容の心身の故障が原因の場合
   病気休暇や病気休職を繰り返してその累計が3年を超える場合であっても、例えば、精神疾患の病状が回復し職場復帰した後に交通事故による外傷によって病気休職等とされた場合のように、当該病気休職等の原因である心身の故障の内容が明らかに異なるときには、この事例には該当しないものとして取り扱う。
 (留意点-適格性欠如の要件を確認しておく必要性)
  この分限免職は、受診命令違反に基づく処分であるから、職員が正当な理由なく受診命令を拒否したことのほか、1)当該職員が有していると思われる疾患又は故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない状況にあると認められること、2)受診命令拒否その他の行動、態度等から、当該職員が職務に必要な適格性を欠くと認められることを客観的資料により確認して行うことが必要である。
 (留意点)
  被処分者となる職員の所在を知ることができないときには、公報等に処分内容を掲載する。
第6 裁判例で示された分限事由についての考え方等
(事案の概要)
 年休の大半を年度の当初から無計画に取得し、年休の不足を補うために病休をとるようになり、勤務日数は大幅に減少し、他の職員にも余分な負担をかけざるを得ない状況になった。しかも、その病休を不正に利用して頻繁に借金返済のための金策に費やした上、上司の再三にわたる注意、指導にかかわらず、一向に態度も改まらず、遅刻を繰り返しては、借金を重ね、職場にも頻繁に私用の電話がかかるなど公務遂行に専念することが困難になり、職務を通じて知り合い、自立指導をしてきた生活保護受給者から多額の金銭を借り受け、破産宣告を受けるに至った。
(「勤務実績不良」についての考え方)
 勤務実績がよくない場合とは、職員が担当すべきものとして割り当てられた職務内容を遂行してその職責を果たすべきであるにもかかわらず、その実績が上がらない場合をいい、当該職員の出勤状況や勤務状況が不良な場合もこれに当たる。
(結論)
 被告が、原告について、地方公務員法第28条第1項第1号及び同項第3号に規定する「勤務実績が良くない場合」及び「その職に必要な適格性を欠く場合」に当たる事由があるとして本件分限免職処分をしたことについては、相当の理由がある。
(事案の概要)
 主治医から、「病名:精神分裂病(現在の病名では「統合失調症」) 長期継続入院の要あり。例え寛解しても消防の職務の任に耐えることは不可能と思われる。」旨の診断書、及び別の病院の医師から、「病名:性格障害、社会的未熟 新しい外界の刺激に対して有意義な適切な反応を示すことは困難な場合が多いと思われる。」旨の診断書を徴し、精神疾患により消防職務の遂行には支障があり、またこれに堪えないものと判断して、分限免職処分を行った。
(「心身の故障」についての考え方)
 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合とは、将来回復の可能性のない、ないしは、分限休職期間中には回復の見込みの乏しい長期の療養を要する疾病のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合を指す。
(結論)
 原告の本件処分の取消しを請求する部分は理由がない。
(事案の概要)
 多数回にわたり懲戒処分等に付され、上司から再三にわたり指導訓戒されているにもかかわらず、長期間にわたり、あえて上司の職務上の命令に従わず、腕章不着用、始業時刻後の出勤簿押印、標準作業方法違反、研修の拒否、超過勤務拒否等の非違行為を反復継続し、著しく職場びん乱した。
(「適格性欠如」についての考え方)
 職務に必要な適格性を欠く場合とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性もが認められる場合をいうものと解される。この意味における適格性の有無は、当該職員の外部に現れた行動、態度に徴して判断すべきであり、その場合、個々の行為、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度については相互に有機的に関連付けて評価すべきであり、さらに当該職員の経歴や性格、社会環境等の一般的要素をも考慮する必要があり、これら諸般の要素を総合的に検討した上、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関連において適格性の該当性を判断しなければならない。
(結論)
1) 被上告人は数年間にわたっては非違行為を繰り返し、再三にわたり、注意・訓告・懲戒処分等に付されたものであり(2)、3)略)、4)人事院の判定が下された後は、それまでとは異なる類型の新たな非違行為を始め、懲戒処分の対象とされなかった非違行為については頑として改めなかったというのであるから、上司の指導、職務命令に従わず、服務規律を遵守しない被上告人の行為、態度等は、容易に矯正することのできない被上告人の素質、性格等によるものであり、職務の円滑な遂行に支障を生ずる高度の蓋然性が認められるものというべきである。そうすると、本件分限免職処分が裁量権の範囲を超え、これを濫用してされた違法なものであるということはできない。
(事案の概要)
 自立神経失調症との診断のため、3年間の病気休職の後復職したものの、病状が改善されなかったことから、病気休暇を付与した。職務能力の有無や職務復帰の可能性を判断するため、提出された1名の医師の診断に加え、もう1名の医師の受診を前後4回にわたり命じたが、分限免職処分を受けるおそれがあることから、これを拒否した。また、当時、心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えない状態にあった。そこで、これらの事情を総合して、分限免職処分を行った。
(結論)
 長期の療養若しくは休養によっても治癒し難い自律神経失調症のため職務の遂行に支障があり、これに堪えず、また、配転可能な他の職務を含めて考慮しても職務の遂行に支障があり、これに堪えない。そして、受診命令を拒否するに至った経過、拒否理由にも照らすと、必要な適格性を欠くものと認められる。
 また、4回にわたり職務遂行能力の有無を把握し、分限免職の要件を充たすか否かを判断するため、医師を指定して受診を命じているにもかかわらず、正当な理由なくして受診命令を拒否し続けている。
 被控訴人は、適格性欠如の要件、受診命令拒否の要件を充たす職員であり、本件処分当時職務に必要な適格性を欠くことが明らかであったことが認められ、本件処分について裁量権行使を誤った違法があるものとは認められない。
 
<勤務実績不良又は適格性欠如と評価することができる事実の例>
 個々の例の中には、同時の懲戒処分の対象となる事実も含まれていることから、当該事実を把握した町長は、分限処分と懲戒処分の目的や性格に照らして、それぞれの処分を行うかを判断する必要がある。
 (1)勤務を欠くことにより職務を遂行しなかった。
  1) 長期にわたり又は繰り返し勤務を欠いたり、勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた。
    連絡なしに出勤しなかったり、いわゆる遅刻・早退した。
    病気休暇、年次休暇が不承認となっているにもかかわらず、病気等を理由に出勤しなかった。
    上司の指示を無視し、資料整理に従事する等と称して出勤しなかった。
  2) 業務と関係ない用事で度々無断で長時間席を離れた(欠勤処理されていない場合でも勤務実績不良等と評価され得る。)
    事務室内を目的もなく歩き回り、自席に座っていることがほとんどなかった。
    勤務時間中に(席を外して)職場外に長時間私用電話した。
 (2) 割り当てられた特定の業務を行わなかった。
    所属する係の所掌業務のうち、自分の好む業務のみを行い、他の命ぜられた業務を行わなかった。
 (3) 不完全な業務処理により職務遂行の実績があがらなかった。
  1) 業務のレベルや作業能率が著しく低かった。
    業務の成果物が著しく拙劣であった。
    事務処理数が職員の一般的な水準に比べ著しく劣った。
  2) 業務ミスを繰り返した。
    計算業務を行うに当たって初歩的な計算誤りを繰り返した。
  3) 業務を1人では完結できなかった。
    他の職員と比べて窓口対応等でトラブルが多く、他の職員が処理せざるを得なかった。
  4) 所定の業務処理を行わなかった。
    上司への業務報告を怠った。
    書類の提出期限を守らなかった。
    業務日誌を作成しなかった。
 (4) 業務上の重大な失策を犯した。
 (5) 職務命令に違反したり、職務命令を拒否した。(受診命令の拒否を含む。)
 (6) 上司等に対する暴力、暴言、誹謗中傷を繰り返した。
 (7) 協調性に欠け、他の職員と度々トラブルを起こした。
<勤務実績不良又は適格性欠如を証明するための客観的な資料の例>
 勤務実績不良又は適格性欠如を判断する客観的な資料の例としては、以下のようなものがある。
 (1) 勤務評定の記録書等職員の勤務実績を判断するに足りると認められる事実を記録又は記載した文書等
 (2) 勤務実績が他の職員と比較して明らかに劣る事実を示す記録又は記載した文書等
 (3) 仕事上の失敗・トラブル、苦情等の記録等
 (4) 指導に関する記録、対話に関する記録等
   職務命令に従わない等、職務にふさわしくない言動に関する記録
   職務に必要な能力、適性、知識を有していない事実に関する記録
 (5) 服務に関する記録(懲戒処分、分限処分等の記録を含む。)
 (6) 身上申告書、職務状況に関する報告
 (7) 研修、業務の割振り変更や他の職務への配置換の結果報告
<実際に分限処分が行われた例>
 勤務実績不良又は適格性を欠くことを理由に分限免職が行われた例としては、以下のようなものがある。
  正規の手順に従って業務を処理せず、来訪者の照会に対しても必要なことを答えないなど、業務遂行に当たって常に同僚職員が応援する必要が生じ、再三の指示、指導にもかかわらず勤務実績の改善が見られず、かつ、遅刻、早退、終日欠勤などで無断欠勤を繰り返した。
  来訪者への対応につき責任をもって行う立場にある者が、勤務時間のほとんどを図書室において個人的な研究や勉強などで時間を過ごし、緊急時を含め、来訪者への対応態度に消極性が顕著で、来訪者や同僚の信頼を得ず、組織協働的な業務運営を困難にした。
  上司・同僚・来訪者に対して、大声でその名誉・信用・人格を傷つけるような誹謗・中傷する内容の投稿をし、職員本人の業務が停滞しているだけでなく同僚職員の業務遂行まで悪影響を及ぼした。
  暴力を伴う言動及び意味不明な言動、職務命令の拒否、部内部外の者に対する長時間の迷惑電話、職員の業務を長時間にわたり中断させる行為などを繰り返し行い、周囲の職員、特に女性職員に対し恐怖感を与え続けた。
  勤務状況について上司から度重なる注意、指導を受けるとともに、懲戒処分(減給)を受けたにもかかわらず、その後も勤務意欲に欠け、遅刻等について指導した上司に対する不適切な言動のほか、出勤後、庁舎の物置等に入り、職務命令を放棄したこともあった。また、事務室において管理者に長時間まとわりつき、管理者及び他の職員の業務の正常な遂行を妨害した。
  課長から命ぜられた課の日常の業務及び特命の業務を行わず、課の内外を問わず大声で叫びあるいは暴言を吐くなど喧騒にわたる言動を繰り返して業務の妨害を行い、勤務時間内に職場を離脱するなどして役所やその関係団体の幹部職員のもとに赴いて執拗に面会を求め、更にこれら職員の自宅を夜間や休日に訪問して執拗に面会を求めるなどの行為を繰り返した。
  繰り返し懲戒処分等に付され、上司から注意、指導、訓戒を受ける等厳重に戒められていたにもかかわらず、数年間にわたって勤務時間中の飲食、雑談などや遅刻によって勤務を欠き、また、ラジオを聞きながら作業を行う、上司等に暴行を加え暴言を浴びせる、故意に作業を遅くするなどの行為を繰り返し行った。
第7 分限処分の公表等
施行期日 平成18年12月1日
 
[別紙参照]